なぜ、この世界に、わたしは一人しかいないのだろう・・・
なんで、もう一人、わたしがいないのだろう・・・
そんな孤独に悩まされ続けてきた。もう、長いこと、もう一人の自分に出会う旅を続けてきた。わたしにとって「自分探し」とは、「ほんとうの自分」ではなく「もう一人の自分」を探す旅だった・・・。
悶々とするわたしの前に、昭和43年、同じ年に産まれた腕時計が現れました。こやつこそ、この世界に同時に生を受け、長い旅を続けた果てに、お互い巡り会う運命だった「もう一人の自分」だと確信しました。54年間にも及ぶ「自分探しの旅」は終了になりました。
これからは孤独ではない「二人の旅」が始まるんですね・・・
開腹手術となったのは、もう一人の自分のほうです。ゼンマイが途切れたのか、突然に秒針が止まってしまいました。もともと、オーバーホール必需品として出品されていたので、遅かれ早かれこうなることは覚悟していました。なにせ50年以上も前の機械なので。修理は値が張ると思います。しかし、かけがえのないもう一人の自分。そこはケチることなく腕のたつお店へ持っていこうと思います。
しばらくの間、顔を会わせることができません。寂しくなりますね。