なぜ、この世界に、わたしは一人しかいないのだろう・・・
なんで、もう一人、わたしがいないのだろう・・・
そんな孤独に悩まされ続けてきた。もう、長いこと、もう一人の自分に出会う旅を続けてきた・・・
わたしにとって「自分探し」とは、「ほんとうの自分」ではなく「もう一人の自分」を探す旅だった・・・
つらつらと、ネットオークションを眺めていると、ふと目にとまったアンティーク腕時計がありました。シチズンのクロノマスターという名機です。その製造年を見ると、なんと、「昭和43年」とのこと・・・。体に電流が走りました。わたしと同じ昭和43年産まれ。もしかするとー、もしかするとー、こやつはわたしの「自分探しの旅(=もう一人の自分探しの旅)」を終了させてくれる存在なのかも。この世界に同時に生を受け、長い旅を続けた果てに、お互い巡り会う運命にあったもう一人の自分なのかもしれない、と。
居ても立っても居られなくなって即落札しました。腕にはめてみると、これまで何本も腕時計をしてきましたが、これまでには感じられなかった無機物ではない、しっかりと生命を感じさせる感触がありました。コチコチと鳴る秒針の鼓動と、わたしのドクンドクンと鳴る心臓の鼓動がシンクロし、まさに心体一致の存在であることを確信しました。
ああ、感無量。これにて、わたしの長かった54年間にも及ぶ「自分探しの旅」は終了になりました。入浴中と就寝中以外、ずうっと左手にはめることにします。そうすることにより、わたしと同じものを見て、同じことを経験することになるのです。
これからは孤独ではない「二人での旅」が始まるんですね。