地方へ出張したり、旅行したりするとき、よく地方百貨店を見にいきます。県庁所在地の一等地に、ドーンと構える本店を見上げると、まるでお城の天守閣を観光しているような気分になるからです。つい、一地方を領国として支配する「戦国大名」へ、イメージを重ねてしまうのです。
地元民から「贈答用は〇〇の紙包みじゃないとダメ」と言われ、絶大な信頼と誠意の象徴だった地方百貨店も、その隆盛が終わり斜陽産業として風前の灯と化しています。しかし、そこに「滅びの美学」を見出だしてしまったりもするのです。時代の移り変わりにより、やがて消えてなくなっていく運命に、たまらなく心ひかれてしまうのです(すんません、まだそう決まったわけじゃないけど)。
一時期、買い物をして紙袋を集めようとしたことがありました。でも、できませんでした。だって、買いたいものが全然無いから・・・あ、だから斜陽産業なんですね(おっと、しつれい!)。
・・・ まあ、そんなこんなで、できるだけ寄った際は写真に撮るようにしています。ただ残念なことに、店内の情景を撮るのは、さすがに憚れます。なので外観だけでもお楽しみいただければと思います。
最近できた知人に横須賀出身者がいます。その方から、「さいか屋」という地元の領主的な百貨店があると聞きました。そこで、この休みを利用して横須賀に足を運んでみました。
京急・横須賀中央駅から歩いて10分ほどで着きました。今日のお目当て「さいか屋」です。一見、3階建てのずいぶん小さな百貨店に見えますが、実際は7階建てのようです。
これこれ~♪ 館と館とを結ぶ連絡通路。これぞ地方百貨店の象徴みたいなものでしょう。これを見ると、気分が高鳴ります。
気分高めでお店に入ろうとすると、入口に衝撃の貼り紙が。な、なんと21年2月で閉店だとか!今日来てよかったあ~。
店内をぐるっと回ってみました。
そこで、あえて厳しいことを言わせてもらえば・・・特別な店も、胸高まる商品も、人に言いたくなる体験も、何一つありませんでした。追い打ちをかけるように、あちこちで老朽化が目立ちました。とくに、百貨店ではエスカレーターに乗り、上へ上へ運ばれていく間、「さあ、これから我々はどこに運ばれるのだろう?」「どんな新しい世界が開かれるのだろう」とドキドキするものですが(それが百貨店の醍醐味なのですが)、肝心の「エスカレーターの手すり」がボロボロで汚い。はっきり言って、手を置くことができなかったです。これでは、のっけから気分が冷めてしまいますよ。
4階の喫茶店で休憩しました。横須賀っぽい食事、ここでしか味わうことができない特別な食事が一つもない、サンドウィッチやパスタやワッフルが並ぶふつうのメニューを見ながら、【おすすめ】と書かれているコーヒーゼリーを注文。味がどうだったかは書きませんが、女性店員さんの笑顔や接客ぶりはすばらしいものがありました。
ふと気がついて、改めて店内をみると、どの階でも店員さんはみんなとてもいい笑顔、雰囲気をだしていました。そのおもてなし力は、かなり高い百貨店だったのではないでしょうか。だとすると、他のところが残念でなりません。
幕末に雑賀衆が開店した呉服屋という、長い伝統の灯がもうすぐ消えるんですねえ・・・